「物理の小道」 ギャラリー

おまけグッズ編  くだらないと言えばくだらないものですが

第107回  文房具シリーズ Qooのおまけ

「Qoo の 鉛筆削り」 + 列車事故を考える!

 コカ・コーラから発売されている 「Qoo(クー)」 という名前の飲料水(ジュース)のおまけです。 1.5リットルボトルのおまけですので、500ccボトルのおまけより質の良いものが付いています。 文房具シリーズとして、各種のグッズが付いていますが、今回紹介するのは、キャラクタ 「Qoo」 が鉛筆削り器の上に乗っているものです。 なお、肝心のジュースはまだ飲んでいませんので、味の程は不明ですが...。

JR福知山線の 「脱線転覆事故」 について

 現在の日本では考えられないような鉄道事故となってしまいました。死者の数も100人を超える大事故になったのです。 それも、列車同士の衝突などの複合事故でなく、1つの電車が起こした単独事故なのですから。 なぜこのような事故が起こってしまったのでしょうか。物理的に分析してみましょう。

遠心力の効果と脱線

 列車が脱線・転覆する理由は電車に働く遠心力を車輪がレールから受ける力で抑えきれなくなるからです。 そのため、横方向の遠心力で、電車がレールから外れて、脱線・転覆してしまうのです。 遠心力は 「電車の質量に比例し、カーブの半径に反比例し、電車の速度の2乗に比例する」 という 「公式(教科書では等速円運動の公式にあります)」 で計算できます。 高校の物理で学習する基本的な公式です。 電車が受ける遠心力は速度の2乗に比例するので遠心力は急激に増加します。 カーブでの制限速度は70km/時といわれています。事故を起こした電車は100km/時を超える速度が出ていたことが分かっているので、 制限速度を大きく超えています。制限速度が70km/時 の時に比べて、3倍程度の遠心力がかかることになります。 列車はほぼ満員だったようですから列車の質量の影響(質量に比例する!)も含めて、相当大きな遠心力がかかっていたことになり、 そのため、脱線転覆につながったのでしょう。 また、カーブに進入した直後に急ブレーキをかけたとのことです。そのため、後部列車が前部列車を押すことになり、編成列車がカーブの外側に押し出される力になります。 その力も遠心力に加わり、非常に危機的な状況を作り出すことになります。 理論上は130km/時までは脱線しないとのことですが、遠心力とその他の効果が複合的に働いたためでしょう。 このような理論値に対して、安全率という要素を加えて、複合効果に対応します。そのためこのカーブの制限速度が70km/時だったのでしょう。

なぜ、速度を出さなければならなくなったのか?

 伊丹駅でのオーバーランによる列車時刻の遅れを取り戻すことがその理由と考えられます。 運転士の若さゆえの勢いで、列車の遅れを一気に取り戻そうと考えたのでしょう。 事故が起こったカーブは塚口駅(快速は通過)を通過した後、尼崎駅に向かう途中です。 伊丹駅から塚口駅を通過する直線部分では最高速を出して通過するのが普通だったようです。 列車の遅れを回復する唯一の部分だそうです。 しかし、尼崎駅の手前には急なカーブがあり、制限速度は70km/時 となっています。 スピードが出すぎているので反射的に運転士は急ブレーキをかけたのでしょう。 運転士は即死だったようですので、想像だけの世界としかなりません。

 命を懸けてまで速度を上げて遅れ回復を狙ったはずはありません。運転士はまさか電車が遠心力で横倒し転覆するとは考えていなかったでしょう。 昨日も制限速度を少し越えていたけれ何も起きなかった。だんだんと制限速度の存在がかすれてきます。 今日はいつものときよりスピードが少し速いが...程度の考えでしょう。もう少しスピードが遅ければ曲がれたでしょう。 「もう少し」を積み重ねると、最早「少し」ではありません。ついに最後の一線を越えてしまった。それが現実でしょう。 勉強でも同じです。気の緩みの積み重ねが積もり積もって取り返しが付かない大きな遅れになるのです。 「最後の一線は厳格に守る」 これですね! 試験前に「間に合わない」となってもそれまでですね。

 29日の ニュース で、線路脇の電柱が損傷されていることなどを伝えており、 速度オーバーでの 「横倒し転覆」が原因での脱線事故だったようです。 通常走行の状態での横倒し転覆事故は聞いたことがありません。台風などの風による力が加わっての転覆はありそうですが...。 筆者が高校生の頃の福知山線は30分に1本程度ののどかなローカル線でした。現在は東海道線本線と同程度の密度での列車運行になっているので、 列車運行の厳しさは比較になりません。その点の設備の更新(ATS、カーブ曲率の緩和)などに大きな問題がありそうですね。

2005/04/28  管理人(志)


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