「物理の小道」 ギャラリー

おまけグッズ編  くだらないと言えばくだらないものですが

第137回  飾り物シリーズ 伊藤園のお茶のおまけ

紅茶犬 アール  〜 ITER とは ? 〜

 お馴染みのキャラクタとなった 「お茶犬」 です。このコーナーにも何度も出てきたキャラクタですが、今回のは茶色のお茶犬です。筆者(志)のパソコン の壁紙もお茶犬です。せりふは「疲れていない? ちょっとお茶しようよ」と疲れた {お茶犬」 の 「リョク」 です。

ITER(国際熱核融合実験炉)

 7月1日の日本経済新聞のコラム記事にITERの話題が取り上げられていました。 ITERとは、以前から日本が力を入れてきた 「国際熱核融合実験炉」 という国際的な規模の巨大科学プロジェクトです。 この巨大科学プロジェクトの中心となって計画を進めてきた日本に、その実験炉を誘致することが求められていたのです。 しかし、日本の働きかけに対して他国の賛同が得られません。 その結果、ヨーロッパに設置する方向に決まってしまったとのニュースがこのコラム記事の話です。 熱核融合反応からエネルギーを定常的に取り出すことに人類は未だに成功していません。 これからの技術を目指す、大きな意義を持つ巨大プロジェクトなのです。 この技術は100年かかるともいわれるほど難しい技術を目指しているので、資源の無い日本には欠かせない技術といえます。。

近代技術は戦争に始まった

 核エネルギーの最初の利用は、原子爆弾でした。ウランの核分裂を利用するこの技術は人類に大きなショックを与えたのです。 原子爆弾に飽き足らず更なる核兵器の改良の過程で登場したものが 「水素爆弾」 です。 水素原子の核融合反応による核エネルギーを用いたもので、巨大な核兵器(TNT相当100メガトン級核兵器)を登場させました。 当時のミサイル技術は稚拙で、命中精度が悪かったため、弾頭の規模を拡大することで、ミサイルの威力をカバーしていたのです。 なお、現在の核弾頭は命中精度が格段に良くなったためこのような巨大核爆弾は使わなくなっています。

戦争から平和へ

 軍事利用の核兵器から脱皮し、平和的に利用する核エネルギー技術に成功した最初のものが原子炉でした。 それを発電所として組み込んだものが原子力発電所となります。 原子力発電所は世界中に建設され、日本でも無視できない存在となってしまったようです。 原子力発電所で使われる原子炉は、原子爆弾と同じ仕組みである 「ウランの核分裂」 を徐々に行わせる技術です。 核分裂反応のスピードを制御し爆発ではない安定的な核エネルギーとして利用しているのです。

水素爆弾から熱核融合炉・核融合発電所

 核融合による核エネルギーとは、軽い原子核同士をくっつけて(核融合させて)エネルギーを取り出す 「水素爆弾」 の仕組みを利用します。 水素原子核はプラスの電気を持っていますので通常では斥力(反発力)が働き、原子核が融合することはありません。 そこで、原子核の運動エネルギーを高くして反発力を超えるスピードで衝突させると水素原子核が融合するのです。 原子の温度を上げれば原子核と電子に分解したプラズマ状態となります。 この中の原子核も温度が数千万度から1億度以上になると 原子核同士の反発力を超えて原子核が接近し核融合することができるのです。 この温度をどのように実現できるか? にかかっているのが核融合利用技術です。 そのための研究の一歩が 「ITER」 になるのです。 温度の高さと継続時間の2つを同時に達成できれば無尽蔵のエネルギーが人間の手に入るのです。 何しろ、海の水の中に大量にエネルギーが眠っているのですから。

「ITER」 が目指すもの

 ITERが目指すものは、熱核融合を起こさせることです。 ウランの核分裂は自然に核分裂するので、分裂をコントロールすることがその技術の中心でした。 核融合はその反応を起こさせることが自体が難しいのです。根本から発想がことなるのが核融合の技術です。 温度を上げるといってもそれを入れる 「容器」 に問題があります。 数千万度以上の温度であればすべての物質は蒸発してしまうので、使えません。 物質で作った容器ではだめなのです。

 太陽は水素の核融合で輝いています。太陽が使っている 「容器j は 「重力」 という容器です。これなら蒸発することはありません。 ITERで使うのは 「磁場」 が容器となります。 高速の水素原子核はプラスの電荷ですから、磁場による荷電粒子の力(ローレンツ力)が働きます。これで閉じ込めるのです。 「磁場」 というの容器に水素のプラズマを閉じ込め、核融合させるのです。 磁場を作るには電流が必要です。高温プラズマを作るのにもエネルギーが必要です。 核融合させるために必要なエネルギーは巨大ですが、核融合を起こすことが出来れば、簡単に元が取れるのです。 核融合を起こすために使ったエネルギーと核融合で得たエネルギーが等しくなる(元が取れる)核融合を起こさせることを 「ブレーク・イーブン」 を達成したというのです。この一歩が人類の夢への第一歩となるのです。

 ITERが目指すもののためにつぎ込まれる巨大資金を狙って産業界も注目です。 巨大な真空容器を作る技術、強力な磁場を作るための超伝導コイル、プラズマを加熱する放電装置などなどが 高度な技術の塊となるITERの設備を作ることで得られるからです。

2005/07/01  管理人(志)


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