パソコン雑誌の流れを大きく分けると
「総合系」、「技術・自作系」と「ビジネス系」、「ゲーム、オタク系」、「ハッカー系」の各分野に分かれます。
「総合系」、「ビジネス系」は知名度の高い有力雑誌が市場を抑えてしまっています。
マイナーな雑誌がこの分野で、有力雑誌と戦い、生きてゆくことは不可能です。
マイナーな雑誌はニッチでしか生きて行けません。
生きてゆける分野は「技術。自作系」、「ゲーム、オタク系」、「ハッカー系」でしかありません。
特に、「ゲーム、オタク系」と「ハッカー系」の分野の雑誌はマイナー雑誌であるがゆえに、
グレーゾーンに踏み込むリスクをとりやすくします。
また、熱心な読者がいるため、安定した販売数が確保できるため、
マイナー雑誌として生きてゆく余地はここだけなのです。
「ネットランナー」は、ここに目をつけて「ハッカー系」の記事を中心に構成し部数を伸ばしてきました。 Windowsシステムのチューニング、CD/DVDのコピーツール、 Winny、WinMXなどのP2Pなどのファイル交換ツールなどの特集を毎号組込み、 少し危険な香りがする記事でマニアックな読者を集める編集方針がとられていたようです。 一方、フリーソフトの発掘も力をいれ、豪華賞金をつけて「フリーソフトコンテスト」を主催し、 フリーソフト分野にも貢献度が大きな雑誌でした。 そのような編集部の方針からか、他誌とは違った付録を使った販売促進策がとられたこともありました。 前回の「中華キャノン」がそれです。 中国での2足歩行ロボット「先行者」をモデルとしたプラモデルを付録のために金型から製作したことです。 当時のパソコン雑誌としてはびっくりするような異色の付録でした。 しかし、この「ハッカー路線」の編集方針には大きなリスクがあったのです。
P2Pソフト(匿名ファイル交換ソフト)「Winny」のプログラマを警察が逮捕するという事件が起こりました。 それ以降、「ネットランナー」は、その反動からか骨抜き状態になって息を潜めています。 「ハッカー路線」から、いわゆる「オタク路線」に切り替えて、雑誌の命をつなぐ作戦(堕落作戦)にでたようです。 雑誌の付録にも、その姿がはっきりと見て取れます。
パソコン雑誌にプラモデルが付録につくことすら異色の企画で驚かされた筆者(志)ですが、
これまた驚きの付録が右の写真です。つい最近までパソコンの裏側「ハッカー路線」を歩き、
突っ走ってきたパソコン雑誌「ネットランナー」が、なんとオタクフィギア「ビスケたん」を付録としてつけたのです。
この付録は、「ネットランナー」が「ハッカー路線」から「オタク路線」への転向の宣言をしたことの象徴です。
いわゆる、硬派から軟派への劇的転向を象徴しているのです。
この付録は、ペットボトル飲料水、チョコエッグのおまけと比べて、随分と力が入っている付録であることには間違いありません。 付録の出来具合は、前回紹介した「中華キャノン」のときより細部まで手が込んでおり、完成度の高いものになっていることが分かります。 しかし、この付録のキャラクタは、この「ビスケたん」が、その世界ではどの程度有名なキャラクタであるのか筆者は知りませんでした。 「ビスケたん」というキャラクタの由来も何も全て分かりませんので、Googleの力を借りてインターネット情報を検索してみました。 検索した結果は、筆者が驚く 4,450件 ものWebサイトが挙がってきました。 相当有名なキャラクタであることはこれで分かりましたが、挙がってきたWebサイトを覗いてみると 巨大掲示板「2ちゃんねる」から生まれたキャラクタのようでした。見事なオタクの世界のキャラクタでした。
しかし、これらの企画をパソコン雑誌としてのおまけに採用するには、 出版社として大きなリスクを負うことになります。雑誌が完売するほど売れればよいのですが、 返本率によっては大きな赤字を抱えることになります。 月末の書店では「ネットランナー9月号」が見かけなくなっているので、完売できたようですが、 2、3日で完売というほどではありませんでした。 「ネットランナー」の「オタク」路線の先行きは暗いかもしれないですね。
ここまでの決断(付録のためにフィギア製作という投資資金)ができるのであれば、 少々のリスクがあっても、元の「ハッカー」路線に戻ってくれたほうが良いと、 筆者(志)も思っているのですが...。 元の路線に戻ることを期待している多くの「ネトラン」ファンがいるのも事実ですからね(祈)。 「ネットランナー」の行方には、これからも注目してゆく必要がありそうです。